「おすすめって何ですか?」
そう聞かれることがある。
もちろん、定番の定食や、おでんの三種盛りを答えることもあるけれど、
本音を言えば、人によって“答え”が違う。
厨房も、ホールも、みんなそれぞれに“推しの一皿”を持っている。
【たとえば、あの“いか天ボール”】

おでん鍋の片隅に入っている、いか天ボール。
目立つわけじゃないけど、これをおすすめに挙げるスタッフは多い。
外はふわっと、中はぷりぷり。
いかの旨味とほんのり紅生姜の香り。
そのまま食べるもよし。
出汁につけてほぐしながら、酒と合わせてもよし。
もともと、仕込み中につまみ食いされすぎてメニューに載ったとか、載ってないとか。
厨房の“スタッフ飯”だった時代を知る人間にとっては、ちょっと特別な一品だ。
【“おすすめ”は、人で変わる】

・焼き場担当が勧めるのは、皮目をパリッと焼いた塩サバ。
脂ののり、焼きの音、皿に盛ったときの香りに惚れてる。
・ホールの若手スタッフは、アジのタタキ定食を推す。
「毎朝届くアジ、今日めっちゃいいっすよ」って、本人が一番うれしそうに言う
・ベテランは、出汁巻き玉子派。
注文を受けてから焼くから、時間は少しかかるけど、
「焼いてる音と香りで頼みたくなるんよね」と語る
おすすめは、“その人がどれだけ惚れてるか”で変わる。
【おすすめを聞いてくれる人が、ちょっと特別】
「これ、おすすめなんですか?」
そのひと言があるだけで、
店側は少しうれしくなる。
料理に興味を持ってくれている。
おいしいものを見つけようとしている。
そんな人にこそ、自分の“推し”を伝えたくなる。
【まとめ:一皿に、人の分だけ理由がある】
誰かが気に入った料理には、
たいてい、理由がある。
自分が初めて食べて感動したときの記憶だったり、
まかないで食べてほっとした瞬間だったり。
それはメニューに書かれていないけれど、
**スタッフの中にずっと残っている“味の記憶”**だ。
だから、たまには聞いてみてほしい。
「今日のおすすめ、何ですか?」
天神 大晴海(たいせいかい)
刺身、おでん、定食、出汁巻き。
どれも人気ですが、どれが“あなたの一皿”になるかは、
おすすめしてくれたスタッフ次第かもしれません。